量子ドット(QD)と有機ELを組み合わせ、従来以上に高い色表現を可能にするQD-OLED(量子ドット有機EL)。大型テレビへの適用を目指し急ピッチで研究開発が進んでいます。
現在サムスンでは、大型ディスプレイ事業として「QD-OLED Display(量子ドット有機ELディスプレイ)」に注力。これまで液晶中心であった事業構造を再編成することを計画しています。付加価値の高い製品をリリースすることで収益性の向上を目指しています。
今回はQD-OLEDについて、またQLEDとの違いについてシンプルかつ分かりやすく解説したいと思います。
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QD-OLEDの量子ドットとは?
この2〜10ナノメートルというサイズは、原子が10〜50個程度の非常に小さなサイズです。(ナノメートルは1メートルの10億分の1を表す単位)量子ドットはその大きさによってエネルギー状態を変えることができる特徴があり、その可能性から生体イメージングなどのバイオ産業、エネルギー産業、ディスプレイなどの電子機器などさまざまな分野での利用を目的とし研究が行われています。
QD-OLEDとQLEDの違いは?
QD-OLEDとQLEDはその構造に大きな違いがあります。液晶パネルを使用しているのか有機ELを使用しているのかが大きな違いです。
QLEDは、LCDパネルとバックライトの間に量子ドットのフィルムを挟んだ構造となっています。
それに対して、QD-OLEDは量子ドット(QD)と有機EL(OLED)を組み合わせた技術です。青色OLEDを発光源とし、青色OLEDはそのまま、赤と緑は量子ドットを適用した別のカラーフィルタ(CF)を通り発色する構造となります。LCDパネルを使用するQLEDと異なり、自ら光を出す自己発光OLEDのため色再現力が高いと言われています。
CES2017でQLED、CES2018でQD-OLEDを発表
韓国サムスンは毎年アメリカ・ラスベガスで行われるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー「CES2017」で量子ドット技術を採用したQLEDを展開。前述の通り、液晶パネルとLEDバックライトの間に量子ドットのシートを貼り付け、ハイコントラストや高彩色を実現したものです。
その後、サムスンはCESのプライベートブースで量子ドット(QD)と有機ELを組み合わせたQD-OLEDを紹介しました。
QD-OLEDディスプレイはQLEDを超えるか?
QD-OLEDの色再現性は非常に優れていると評価されていますが、まだ開発段階のため画質面では輝度やコントラスト、製造面ではコストや歩留まりなどの課題がああり、現在はそれらの改善に向けて研究が行われています。
QLEDはすでに製品化されている?
サムスンは43インチから85インチまでのテレビを発売しています。なかでもハイエンドモデルの8Kモデルは息を飲むほどの美しい映像美を堪能できるテレビになっています。
サムスンに続き世界2位の薄型テレビ出荷台数を誇るTCLは、4KQLEDテレビの「65X10」を発売。
QLEDというハイエンドモデルを提げ日本テレビ市場への本格的に参入。量子ドットを使用することで色域が広がり、同社従来モデルと比較して約115%まで色域表現を拡大。色純度の高い色彩表現を実現しました。
QD-OLEDのリリース時期は?
サムスンは「次世代ディスプレイに今後5年間で総額13兆ウォンを投資する」と発表しており、忠清南道牙山市湯井の工場を軸に新規設備投資を実施しています。
2020年後半に生産ラインを立ち上げ、2021年前半の製品リリースを目指しています。
また、サムスンは次世代のQD-OLEDとして、赤、緑、青の全てを自発光QD-OLEDにすべく研究開発を進めています。