動物の保護や健康志向の高まりなど植物肉の需要が拡大しています。先行するアメリカ・インポッシブルフーズ社やビヨンドイート社に加え、伊藤ハムや日本ハムなど国内企業も参入を表明。
植物肉市場は今後拡大を続け、2030年には9兆円規模になると予測されています。
日本ではまだ馴染みのない植物肉ですが、大手メーカーによって様々な商品が開発されスーパーの棚にも並ぶようになってきました。
今回は、そんな植物肉についてシンプルかつ分かりやすく解説したいと思います。
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植物肉とは
植物肉とは、植物性タンパク質で作った人工肉です。代替肉とも言われ、原料は大豆やこんにゃくなど。健康や環境への意識が高まっていることから注目を集めています。
米「インポッシブル・フーズ」「ビヨンド・ミート」
アメリカで先行している植物肉は「インポッシブル・フーズ」「ビヨンド・ミート」の2社によって主に提供されています。
インポッシブル・フーズは2011年にアメリカ・カリフォルニア州に設立され、植物由来の人工肉や乳製品を製造・開発する食品テクノロジー企業です。現在では、アメリカや香港、シンガポールなどのレストランで同社の人工肉を販売しています。
ビヨンド・ミートは2009年設立。こちらも植物由来の人工肉を製造・開発する食品テクノロジー企業です。ファストフードチェーンやスーパーマーケットで製品を販売しています。
ビヨンド・ミートの売り上げは、2019年では330億円(前年比3.4倍)と事業拡大を続け、2020年にはさらに6割程度売り上げを伸ばそうとしています。業界自体に勢いがあり、今後大きく拡大していくと期待されています。
日本では「伊藤ハム」などが人工肉の販売を開始
国内では「伊藤ハム」が2020年3月よりスーパーマーケット等で人工肉の販売を開始しました。
伊藤ハムは「まるでお肉!大豆ミートシリーズ」として大豆を原料としたソーセージ、ミートボール、ハムカツ、やわらかカツなどをリリース。まるでお肉のような噛み応えを感じられる食感や大豆と相性の良い香辛料の使用など、食感、味、香りに拘った人工肉を開発しました。
大豆ミートが食べられる飲食店
植物肉が食べられる飲食店の開業も始まっています。大阪に本社を置く、食品加工会社 不二製油が手がける大豆ミートレストラン(大阪大丸心斎橋店内)では、大豆を熱と圧力で加工し鶏肉や豚肉に近い食感に仕上げた料理を提供しています。
気候変動は家畜が原因?
温室効果ガスを減らすことができるのも植物肉を使う大きなメリットのひとつです。
植物肉と温暖化では一見関係ないようにも思えますが、地球温暖化の大きな要因とされるメタンガスは畜産によって排出されています。
家畜のげっぷや排泄物からでるメタンガスは、二酸化炭素(CO2)の25倍も温暖化へ影響があると言われ、近年欧米では気候変動の大きな要因であるという認識が広がっています。
これまでは地球温暖化といえば、運送やエネルギー業界から発生するCO2ばかり取り上げられ、畜産について議論が行われることは多くはありませんでした。
世界人口増加における食肉需要
日本は人口減少社会へと移る中、世界人口はそれとは対照的に増加の一途を辿っています。現在の77億人から、2050年には97億人、2100年には110億人になると予測されています。
途上国での食肉需要が増え続けると、その供給が間に合わなくなります。牛自体の数、牛1頭を育てるための穀物の生産、畜産にかかる大量の水などが足りなくなり、その結果、需要を満たすことが困難になると言われています。
ESG投資が追い風となる
ESGとは、環境・社会・企業統治という3つの要素を指し、企業の持続可能性と社会的影響を測る尺度として用いられています。この活発に行われているESG投資が植物肉開発を加速させています。