ペロブスカイト型太陽電池を分かりやすく解説

ペロブスカイト結晶はシリコン系太陽電池に代わる太陽電池として注目を集めています。

ペロブスカイト型とは立方晶系の結晶構造の一種です。鉱物に多く見られ、最近ではこの物質特性に関するさまざまな研究が行われるようになりました。

これまでスタンダードだったシリコン系太陽電池は硬い基板上で作られていたため、曲げることができず設置場所が限られていました。大規模なシステムでは広大な砂漠や草原など、都市部ではビルや住宅の屋根の上などというように設置できる場所は限られている状態でした。

ペロブスカイト型太陽電池はその柔軟性を活かし、これまでシリコン系太陽電池がなし得なかったものを実現しようとしています。

今回は、そんなペロブスカイト型太陽電池の特徴をシンプルかつ分かりやすく解説したいと思います。

ペロブスカイト構造:結晶構造の一種。酸化物の灰チタン石(ペロブスカイト)と同じ結晶構造



\特徴1/ ペロブスカイト型太陽電池は薄くて軽い

ペロブスカイト型太陽電池は、固い基板上に作られたシリコン系太陽電池に比べ、薄く、軽量、さらに曲げられるのが大きな特徴です。

これによってデザイン性の高い建物の外壁にペロブスカイト型太陽電池を設置したり、建物内の柱や窓、はたまたテントやプレハブまでこれまでの常識では考えられなかった場所で発電を行うことができるようになります。

\特徴2/ 変換効率 目指すは30%!!


ペロブスカイト型太陽電池の変換効率は現在25%程度です。

ペロブスカイト型の結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池では、年々変換効率が上がってきており現在では25%程度となっています。しかし、これは小面積セルを使用した実験室レベルのデータであり、実機を想定した大面積のパネルでは変換効率が大きく低下することが問題となっていました。

そのような中、2020年1月 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)/パナソニック(株)は、大面積モジュールでの高変換効率化を実現。300mm x 300mm基板において世界最高のエネルギー変換効率16.09%を達成しました。

シリコン系太陽電池25%には及びませんが、ペロブスカイト型太陽電池は理論上では変換効率30%を超えると考えられています。製造方法や材料の改善などでさらなる効率の向上を目指しています。

\特徴3/ 塗って作れるため低コスト


(図:科学技術振興機構)

ペロブスカイト型太陽電池の作り方は、基材に溶液を印刷する方式のため低コストで作れます。

従来型のシリコン系太陽電池では、材料や製造コストが高いというデメリットがありました。対してペロブスカイト型太陽電池の作り方は、基材に溶液を印刷する方式となります。フレキシブルな基材上に電極、金造酸化物、ペロブスカイト結晶薄膜などを形成。製造が容易であり従来型太陽電池に比べ低コストで作ることができます。

また、ペロブスカイト型太陽電池は曲げられる基材にプラスチックフィルムを使うことができます。これはペロブスカイト型太陽電池を製造するときの温度をシリコン型に比べ低くできるためです。温度が高い場合はプラスチックフィルムの耐熱温度を超えますが、ペロブスカイト型太陽電池ではその範囲内に抑えることができます。高温処理を必要としないため製造装置等のイニシャルコストを下げられるメリットがあります。



NEDO/東芝が開発したメニスカス塗布法


(図:東芝)

2018年6月、東芝とNEDOの太陽電池を共同開発の中、世界最大面積、世界最高エネルギー変換効率を実現したと発表しました。(2018年6月時点)

ここで採用されたのが「メニスカス塗布法」です。東芝社は「一度の塗布でペロブスカイトの膜を基板上に形成しようとするとペロブスカイトが早く結晶化してしまい、良質な膜ができません。これを、ペロブスカイトを形成するヨウ化鉛(PbI2)とヨウ化メチルアンモニウム(MAI)の溶液に分けて、1液目はPbI2溶液、2液目にMAI溶液の順番で塗布することで、基板上で結晶成長する速度を調整し、均一なペロブスカイトの膜を形成しました。その他にも、インクの組成を工夫したり、膜を形成する際の乾燥条件を工夫したりすることで、大面積でも結晶膜質の均質性を高めることに成功しました」 と語ります。

NEDO/パナソニック 世界最高変換効率16.09%を達成


(図:パナソニック)

2020年1月、NEDO/パナソニックは世界最高変換効率16.09%の達成を発表。

太陽光発電の導入促進を目的に「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」に取り組んでおり、今般、同事業でパナソニック株式会社(以下、パナソニック)は、ガラスを基板とする軽量化技術や、インクジェットを用いた大面積塗布法を開発し、これらの技術を用いて作製したペロブスカイト太陽電池モジュール(開口面積802 cm2:縦30 cm×横30 cm×厚さ2 mm)で世界最高のエネルギー変換効率16.09%を達成しました。今後、ペロブスカイト層材料改善により結晶シリコン太陽電池並みの高効率達成を推進し、新規市場での実用化に向けた技術確立を目指します。

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