アメリカ・インテルは、2020年7月23日 Q2決算発表を行いました。
「7ナノ中央演算処理装置(CPU)製品のタイミングは、約6カ月遅れ」
「7ナノ製品の量産は、約12カ月遅れる方向」
と説明。要は開発が遅れている7ナノプロセスルールのチップのリリースは2022年末か2023年になるというものです。
インテルというと、これまではチップの設計から製造までを自社で行っているのが強みでした。
2015年まで継続していたチックタック戦略のように「プロセス」と「アーキテクチャ」の改善を毎年交互に行っていき、新製品をリリースしていく方式で技術を進化させてきました。
しかし、近年は微細化の技術では競合に遅れを取り始めています。ライバル企業のAMDは7nmプロセスのチップを発売し、大きな評価を受けている一方で、Intelの開発はそのスピードに乗ることができず、市場では時代遅れのチップという評判さえ聞こえてきます。
もともとCPUと言えばインテルの1強です。そこにAMDが現れ、独自のCPUを製造するようになりました。2019年に発売された「第三世代Ryzen」ではインテルに先駆け7nmプロセスルールを採用したことで、マーケットシェアを一気に伸ばしています。
グラフ:青線がインテル、赤線がAMD。
ファブレス企業のAMDは、その製造を台湾のTSMCに委託しています。TSMCでは2018年に7nmプロセスルールでの生産を開始。2020年には5nmプロセスルールでの生産を開始。さらに2021年には3nmプロセスのリスク生産を開始すると発表しています。
これに対して、インテルでは7nmプロセスルールに苦戦している状況です。
それどころか、インテルの現時点の主力は14nmプロセスとなっています。10nmプロセスよりも14nmプロセスのほうが出荷量が多いというのが現状です。
インテルのスワンCEOは「新製品生産プロセスが遅れる場合、全てを自社で行うのではなく、別の手段を試すことが可能になる」と他のファブレス企業同様に製造を他社へ委託する可能性について言及しました。
インテルの2020年Q2の収益は197億ドル、前年同期比より20%増になっているにも関わらず、技術開発の遅れから株価は大きく下落。2020年3月のコロナショックの急落からいち早く回復したものの、Q2決算発表の翌日には16%安となる急落となりました。
悪化する米中関係の影響もありますが、これだけの急落に市場では大きく取り上げられています。
実際の配線ピッチを比較するとAMDの7nmプロセスとインテルの10nmプロセスはほぼ同等だと言われています。このプロセスルールの表記がどれだけ意味をもつのか、インテルにとっては世代表記の考え方を改め、別の評価指標にしたほうが良いような気もしますね。「X nmプロセスルール」って分かりやすくていいのですけど。