企業分析 AGC 素材の会社へと変革できるか?

経済

AGCとはどんな会社

AGCは、ガラスを主としてエレクトロニクス、化学品、セラミックスと組み合わせることで付加価値を高めた製品を作り出している会社です。フロート板ガラスは生産量では世界市場シェアNo.1です。

AGCはガラス屋さんというイメージも強いですが、最近では「なんだし、なんだしAGC。素材の会社 AGC」と言われるようにガラスメーカーを超えて”素材の会社”へと変革しようとしています。

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AGCの歴史

◇ 1907年 三菱グループの一員として創業し板ガラスの製造を開始。

◇ 1910年代より積極的に海外へ進出。

◇ 1950年には証券取引所に上場。

◇ 1956年には需要急増に応え、テレビや自動車用ガラス事業へ進出

◇ 1970年代よりケミカル処理されたフッ素樹脂、フィルムなどの開発を加速

◇ 1995年 TFT液晶ガラスの生産を開始、透明導電膜付きやスマートフォン向け強化ガラスなど数々の製品をリリース

◇ 2007年 創業100周年を機にAGCのシンボルマークを導入し、2018年には社名を旭硝子株式会社からAGC株式会社に変更

“Look Beyond”をAGCのグループビジョンとし、“Your Dreams, Our Challenge”をブランドステートメントとして策定。

易きになじまず難きにつく
人を信ずる心が人を動かす
世界に冠たる自社技術の確立を
開発成功の鍵は使命感にあり

AGCは、この創業の精神を礎に、
お客様とゆるぎない信頼関係を築きながら、
独自の素材とソリューションで、
時代のトップランナー達を支えてきました。
私たちはこれからも、 互いの知見や技術を掛け合わせ、
人々の想いの先、夢の実現に挑んでいきます。

「開発成功の鍵は使命感にあり」

”素材会社としての使命、そして新たな価値を創造することへの挑戦”を掲げ事業を運営しています。

AGCの事業

AGCグループの売り上げは約1兆5000億円。事業は、ガラス、電子、化学品、セラミックスの4つのセグメントに分けられます。

◇ ガラス事業は、建築用などに使用され売上高は7,575億円。営業利益は225億円です。
◇ 電子事業は、売上高2,526億円、営業利益は240億円。ガラス事業の3割程度の売り上げでありながら、営業利益はガラス事業を上回っています。ディスプレイや電子部材用ガラスの付加価値が高いことを示しています。
化学品事業では、売上高4,844億円に対して営業利益は711億円。利益率の高さが際立ちます。

ガラス事業は長期安定的な収益基盤、電子事業や化学品事業は高付加価値による高収益モデルと言ったところでしょうか。

財務データ


この5年間の売り上げは1.28兆円から1.52兆円。営業利益率は5〜8%で推移しています。2019年12月期は、売上高は前年と同じながらも営業利益率は8%から5%へ低下しています。

ここ2年ほどは改善傾向だった営業利益率が下がった要因としては、新規設備立ち上げに伴う減価償却費増加や化学品の製造原価上昇、日本の自動車用ガラスの生産不調などによるものと伝えられています。

[その他財務データ]
自己資本比率 54.7%
1株当たり純資産 3,388.75円
1株当たり当期純利益 806.73円

株価推移


2017年7月には一時5,000円を超えるまで上昇しましたが、2019年は3,000〜4,000円で推移。2020年は、新型コロナの影響により2,300円台まで下がりました。

[PER、PBR]
PER 8.5
PBR 0.5

経営状況

10年ほど前は営業利益率10%超えが続いていましたが、成長率が鈍化したことにより近年は1桁台で推移しています。液晶用ガラスなどの価格低下も原因のひとつです。

また、新型コロナによる自動車生産台数の減少などから、ガラス出荷量へ影響するのは避けられません。AGCは2019年12月決算のため、2020年度の売り上げは前年同水準の1.55兆円と予想していましたが、その後の新型コロナ感染拡大により下方修正は止む無しです。現時点では多くの企業と同様に見通しが立てれない状況と思われます。

環境分析

国内板ガラス出荷量


(図:AGC)
国内建築用ガラス市場の縮小に対応するため、セントラル硝子(株)と国内 建築用ガラス事業統合の基本合意書を締結。2020年末の事業統合を目指しています。

液晶用ガラスの需要


液晶用ガラスの需要は、中国において特に増加していきます。中国のパネルメーカーが大型マザーガラスを用いた生産設備を増強しており、今後は第10世代、第11世代のガラス需要が増えていくと予想されています。

一方で、液晶用ガラスの価格下落が続き、利益率を悪化させている要因にもなっています。


【参考】こちらはガラス価格ではなくパネルの価格になりますが、ここ数年パネル価格の下落が止まりませんでした。

苛性ソーダ、塩化ビニル市場


苛性ソーダ、塩化ビニル市場はともに伸びていきます。AGCとしても積極的に能力を増強すべき分野となります。

競合会社

競合会社は、国内では日本板硝子(5202)や日本電気硝子(5214)、海外では米・コーニングです。

コーニングは液晶パネル用ガラスでは世界トップです。シェアは50%程度ありAGCの25%を大きく引き離しています。液晶パネル用ガラス3位の日本電気ガラスは20%のシェアとなり、第10世代、第11世代ガラスの中国需要が増えていく流れではありますが、液晶用ガラスの価格自体は低下しており、今後大きく飛躍することは難しいとされています。

5Gの波に乗れるか

5Gとは、「超高速・大容量」、「超低遅延」、「多数同時接続」と言う3つの特長を持つ次世代の移動通信システムです。調査会社IHS Markitでは、グローバルマーケットにおいて2035年までに12兆3000億ドル、2200万人の雇用が創出されると試算しています。

2023年時点では、世界全体の28.2%が5G対応端末になると予測。2025年以降には全体の半数以上が5G対応端末となると予測しています。この本格的な普及期に向けてAGCの5G関連事業が軌道に乗るかどうかが注目されます。

次世代技術に期待


5G向けガラスアンテナはAGCの期待される技術のひとつです。

この5Gアンテナは小型かつ薄型の透明ガラスアンテナのため、景観を損ねることなく設置できるという特長を持っています。

NTTドコモ、AGCとエリクソンは、自動車や鉄道などの車室内や建物内での安定した第5世代移動通信方式による高速通信実現に向け、28GHz帯の電波送受信が可能な「ガラス一体型5Gアンテナ」で、5G通信に世界で初めて成功しました。

NTTドコモ、AGCとエリクソンはは、5Gのミリ波のアンテナをガラスに埋め込んだ製品を開発しました。5G、特にミリ波と呼ばれる高周波数帯の電波は障害物を通り抜けることができません。そのため小さなアンテナが数多く必要になります。ガラス一体型にすることにより電波を送受信。景観を損なうことなく、建物や車両などへ設置することが可能です。

すでに4Gではガラスアンテナの実績があり、2020年中には5Gでのサービスを提供する予定。今後5Gの普及に伴い、建物のみならず自動運転などを行うコネクテッドカーへ向けての需要も高まると予想されます。

また現在は電柱に巻きつけることができるアンテナの開発を進め、数年かけて実用化を目指しています。

AGCの次の柱は電子と化学品

AGCの次の柱となるセグメントは電子と化学品です。

建築用や自動車用のガラスに商売としての旨みはもうありません。落ち込みは厳しく低迷が続きます。液晶用ガラスも価格低下により利益率は低くなってきています。

5G通信インフラやIoT機器向けに代表される高付加価値製品や、フッ素樹脂、合成石英などの素材でどれだけ市場を広げることができるかにかかっていると思われます。

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