ブックレビュー 「五代友厚」織田作之助

五代友厚
著者 織田作之助

[出版社説明]
2015年下期NHK朝の連ドラ「あさが来た」のヒロインの縁故者、薩摩藩の開明派志士の生涯を描くオダサク異色の歴史小説。後年を描く「大阪の指導者」も収録する決定版。著者は織田作之助 1913-1947。太宰治、坂口安吾と並ぶ無頼派三大作家のひとり。代表作に「夫婦善哉」。

本書には、「五代友厚」(昭和17年)と「大阪の指導者」(昭和18年)が載っています

前半の「五代友厚」は、20代の五代友厚(五代才助)の物語。

文久2年(1862年)、薩摩藩主の行列に乱入したイギリス人を殺傷したことから物語ははじまります。薩摩とイギリスの薩英戦争の中、五代友厚がイギリス海軍の捕虜になる様子は武士にあるまじき行動と非難され、藩内で孤立していきます。

経済に関わる部分に注目が集まりがちですが、こんな壮絶な青年期を過ごしていたのだと物語の中へどんどんと引き込まれます。非常にリアルに描かれているので、その情景が鮮明に浮かび上がってくるのが良いですね。

前半の「五代友厚」は青年期の物語のため、大阪経済に関わる部分は後半の「大阪の指導者」に記載されています。

こちらは小説というよりも歴史的な貴重な資料となり、五代友厚が歩んできた道、関わってきた人たちの名前が詳細に記されています。著者の思い入れを強く感じる仕上がりですね。



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